こんにちは。税理士の蛇沼です。
「夫婦間でお金を移すだけなら、贈与税はかからない?」
「父と母から、それぞれ110万円ずつもらっても大丈夫?」
「孫への贈与は、相続税の計算に加算されない?」
生前贈与では、ご家族の間でも、受け取る目的や財産の管理方法によって税金の扱いが変わります。
この記事では、夫婦間のお金の移動、父母から受ける贈与、孫への暦年贈与、教育資金の贈与について、よくある4つの誤解と確認したい注意点を解説します。
- 夫婦間の生活費と、貯蓄・投資に回すお金の違い
- 父母それぞれから贈与を受けた場合の、年110万円の考え方
- 孫への暦年贈与が、相続税の計算に加算される場合
- 教育資金を贈与するときに確認したい非課税の条件
【誤解①】夫婦間の口座移動なら、贈与税はかからない?
結論:生活費として必要な都度使うお金と、貯蓄・投資のために渡すお金では、扱いが異なります。
夫婦間で、通常必要な生活費を必要な都度渡し、食費や家賃などに直接使う場合は、原則として贈与税はかかりません。この非課税の扱いは、年110万円の基礎控除とは別です。
一方、生活費という名目で受け取っても、使わずに貯蓄したり、株式などの購入に充てたりする部分は、この非課税の対象になりません。
例えば、夫のお金を妻に贈与し、妻名義のNISAで投資する場合、NISAの運用益が非課税でも、資金を受け取ったことに対する贈与税は別に判断します。
暦年課税では、その年に受けた課税対象となる贈与の合計額が110万円を超える場合、原則として贈与税の申告が必要です。
また、口座の名義を変えただけで、元の所有者がお金を管理し続けている場合は、実態として誰の財産なのか確認が必要です。110万円以下という金額だけで、名義預金かどうかが決まるわけではありません。
贈与する場合は、双方の意思を確認し、受け取った人が財産を管理できる状態にしましょう。
贈与契約書や振込記録は、その経緯を残す資料になりますが、契約書だけで判断されるものではありません。
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【誤解②】父親から110万、母親から110万なら、年間220万まで非課税?
結論:両方とも暦年課税の場合、年110万円の基礎控除は、受け取る人1人につき合計で適用されます。
暦年課税では、1月1日から12月31日までに受けた、課税対象となる贈与を合計して計算します。
贈る人ごとに110万円の枠があるわけではありません。
例えば、同じ年に父から110万円、母から110万円の現金贈与を受け、両方とも暦年課税の場合は、次のようになります。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 父から受けた贈与 | 110万円 |
| 母から受けた贈与 | 110万円 |
| 贈与の合計額 | 220万円 |
| 暦年課税の基礎控除 | ▲110万円 |
| 贈与税の計算対象となる金額 | 110万円 |
※ほかの贈与や非課税の特例がない場合の例です。計算対象の110万円が、そのまま税額になるわけではありません。
祖父母などから暦年課税による贈与を受けた場合も、同じ年の分を合計します。
ただし、通常必要な生活費・教育費を必要な都度受け取り、直接その支払いに使ったものなど、贈与税がかからない財産は除きます。
なお、一方の親からの贈与に相続時精算課税を選択している場合は、計算方法が異なります。
今回の例と混同せず、適用している制度を確認しましょう。
贈与を受ける際は、誰から・いつ・いくら受け取ったかを記録し、年間の合計額を確認することが大切です。
【誤解③】孫への暦年贈与なら、相続税の「7年ルール」の対象外?
結論:「孫だから」ではなく、贈与した祖父母から相続などで財産を取得するかどうかで判断します。
孫が、亡くなった祖父母から相続や遺贈などで財産を取得しない場合、その祖父母から受けた暦年課税の贈与は、原則として相続前贈与の加算対象になりません。
ただし、次のような場合は、孫でも加算対象になることがあります。
- 遺言書により、その祖父母の財産を受け取る
- 代襲相続人として、その祖父母の財産を相続する
- その祖父母が保険料を負担していた死亡保険金を受け取る
死亡保険金など、相続により取得したとみなされる財産も確認が必要です。
「法定相続人ではないから対象外」とは判断できません。
また、「7年ルール」は段階的に適用されます。
| 祖父母が亡くなった日 | 加算対象期間 |
|---|---|
| 2026年12月31日まで | 相続開始前3年以内 |
| 2027年1月1日~2030年12月31日 | 2024年1月1日から死亡日まで |
| 2031年1月1日以降 | 相続開始前7年以内 |
加算対象となる人は、年110万円以下で贈与税がかからなかった贈与も、対象期間内であれば原則として加算します。
延長された期間のうち、相続開始前3年を超える部分には、合計100万円まで加算しない扱いがあります。
なお、相続時精算課税を選択している場合は別のルールになります。
孫への贈与を検討するときは、贈与だけでなく、遺言書や死亡保険金の受取人も含めて確認しましょう。
📌 「7年ルール」について、詳しく確認したい方はこちら。

【誤解④】教育資金の一括贈与特例が終わると、学費の援助にも贈与税がかかる?
一括贈与の特例が終了しても、必要な学費をその都度援助する場合は、贈与税がかからないことがあります。
教育資金をまとめて贈与する非課税特例は、2026年3月31日で新たな適用が終了しました。
2026年4月1日以降の贈与には、この特例を利用できません。
ただし、2026年3月31日までに特例の適用を受けた資金には、引き続き制度のルールが適用されます。
金融機関への領収書の提出などが必要で、贈与者が亡くなったときや契約が終了したときには、残額に税金がかかる場合があります。
必要な学費を、その都度援助する場合
親や祖父母などの扶養義務者から受け取る教育費は、通常必要と認められる範囲で、必要な都度、直接教育費に充てる場合には贈与税がかかりません。
この扱いは、暦年課税の「年110万円の基礎控除」とは別です。
条件を満たす教育費なら、110万円を超えても直ちに贈与税がかかるわけではありません。
例えば、大学の授業料の請求に合わせて祖父母が支払う場合などが考えられます。
請求書や領収書、振込記録を残し、何の費用を援助したのか確認できるようにしておきましょう。
将来の学費をまとめて渡す場合は注意
「教育費という名目なら、いくら渡しても非課税」という意味ではありません。
数年分の学費をまとめて渡し、使わずに預金している場合や、株式などの購入に回した場合には、この非課税の扱いを受けられないことがあります。
教育費の援助では、「誰が・いつ・何のために支払い、実際にどう使われたか」を確認することが大切です。
参考:国税庁
「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」
「贈与税がかからない場合」
まとめ|生前贈与は、金額だけでなく渡し方や使い道も確認しましょう
生前贈与では、「家族間だから」「年110万円以下だから」という理由だけでは、税金の扱いを判断できません。
今回の4つのポイントを整理すると、次のとおりです。
- 夫婦間の送金:必要な生活費と、預金・投資のために渡すお金では扱いが異なります。
- 父母からの贈与:暦年課税では、受け取る人ごとに、その年の贈与を合計して年110万円の基礎控除を適用します。
- 孫への贈与:孫が同じ祖父母から相続や遺贈などで財産を取得するかによって、相続前贈与の加算の扱いが変わります。
- 教育費の援助:一括贈与の特例と、必要な教育費をその都度支払う場合の非課税の扱いは別の制度です。
贈与を進める前に、誰から誰へ、何のために、いつ、いくら渡すのかを整理しましょう。
遺言や生命保険の受取人も含めて確認すると、相続時の扱いまで考えやすくなります。
相続税の確認や生前贈与など、知りたい内容から記事を探したい方は、相続・贈与ガイドをご覧ください。
ご家族に合った贈与の進め方を、一緒に整理します
「夫婦間の送金は贈与になる?」「子どもと孫のどちらに渡したらよい?」など、ご家庭によって確認すべき点は異なります。
蛇沼浩之税理士事務所では、現在の財産やご家族の状況、ご本人の生活資金を確認しながら、相続・贈与の進め方をご相談いただけます。
初回相談は60分無料です。
名古屋市緑区を中心に、天白区・南区・大府市・東海市・豊明市などへの出張相談にも対応しています。
まずは、気になっていることをお聞かせください。

生前贈与に関するよくあるご質問
Q. 夫婦間で生活費を振り込むと、贈与税がかかりますか?
通常必要な生活費を、必要な都度、直接生活費に充てる場合には、贈与税はかかりません。
ただし、使わずに預金したり、投資に回したりするために渡したお金は、同じ扱いにはなりません。
Q. 父と母から、それぞれ年110万円を受け取っても非課税ですか?
暦年課税では、受け取る人がその年に贈与された財産を合計して判断します。
父と母からそれぞれ110万円、合計220万円を受け取る場合、ほかの非課税制度などを利用しなければ、年110万円の基礎控除を超える部分が贈与税の課税対象になります。
Q. 孫への贈与は、相続税の加算対象になりませんか?
孫というだけで対象外になるわけではありません。
その孫が、贈与した祖父母から相続や遺贈などで財産を取得する場合には、加算の対象になることがあります。
遺言による取得や代襲相続のほか、祖父母が保険料を負担した死亡保険金を受け取る場合にも確認が必要です。
Q. 教育資金の一括贈与の特例が終了すると、祖父母による学費の援助にも贈与税がかかりますか?
特例が終了しても、祖父母などの扶養義務者が、通常必要な教育費を必要な都度、直接教育費に充てる場合には、贈与税はかかりません。
将来の学費をまとめて渡し、預金として残す場合などは、別途確認が必要です。
Q. 贈与契約書があれば、税務上も問題ありませんか?
贈与契約書だけで判断されるわけではありません。
双方が贈与に合意しているか、受け取った人が財産を管理・処分できるかなど、実際の状況も確認されます。
契約書に加え、振込記録なども残し、実態に合った管理をすることが大切です。
当事務所の詳しいサポート内容や料金プランについては、以下より公式ホームページをご覧ください。
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