こんにちは。税理士の蛇沼です。
前編では、実家や土地が引き起こすもめ事や「負動産(お荷物不動産)」のリスクについてお話ししました。
後編となる今回は一転して「攻めの不動産対策」です。
「手元にある現金を、ただ銀行に眠らせておくのはもったいない」
「合法的に、かつ劇的に相続税を抑える方法はないの?」
という方のための戦略をお届けします。
実は、日本の税制において、不動産はトップクラスの「節税効率」を誇る資産です。しかし、最新の令和8年度税制改正によって、これまでの「ただ買うだけの駆け込み節税」は完全に通用しなくなりました。
これからの時代に生き残る「本物の相続対策」と、子ども世代に感謝される不動産を遺すための見極め方を分かりやすく解説します。
📌前編をまだお読みでない方はこちらの記事から先にお読みください。

なぜ現金よりおトク?不動産が持つ「攻め」の節税マジック
なぜ、多くの資産家や地主さんが相続対策に不動産を組み込むのでしょうか。それは、現金を不動産という「カタチ」に変えるだけで、国税庁のルール上、財産の価値がグッと小さく計算されるからです。
【評価額の圧縮】現金を不動産に変えるだけで2割〜3割に?
例えば、現金で「1億円」を持っていると、相続税の計算でもそのまま「1億円」として課税されます。
しかし、この1億円で賃貸マンションを購入すると、相続税の計算の元になる「評価額」は、建物の固定資産税評価額や土地の路線価をベースに計算するため、現金のおおよそ6割〜7割程度にまで下がります。
さらに、それを人に貸し出す(賃貸用にする)ことで「借地権割合」や「借家権割合」が差し引かれ、最終的な評価額は現金に比べて約2割〜3割にまで圧縮されるのです。
【小規模宅地等の特例】実家の土地なら税金が最大「80%オフ」
さらに強力なのが、この特例です。亡くなった人が住んでいた実家の土地や、営んでいた事業の土地などを家族が引き継ぐ場合、一定の条件を満たせば、土地の評価額を最大80%も減額(引き下げ)してくれます。
3,000万円の土地であれば、なんと600万円の価値として税金を計算してもらえるため、これだけで相続税がかからなくなるご家庭も数多くあります。
【大増税】令和8年度税制改正で「駆け込み不動産節税」は一発アウトへ
不動産の高い節税効果を逆手に取り、これまでは「亡くなる直前に、慌ててタワマンやアパートを借金して買い、相続税を無理やりゼロにする」という、いわゆる駆け込み節税が横行していました。
国はこの事態を重く受け止め、令和8年度税制改正大綱において、極めて厳しい規制を打ち出しました。
激震!「5年以内の取得・新築」は時価評価に
新しいルールでは、「亡くなる前5年以内」に取得または新築した賃貸用不動産などについては、これまでのようなおトクな評価(路線価などによる圧縮)を使うことが認められなくなりました。
亡くなる直前5年間に駆け込みで買った物件は、原則として「実際に買った金額(時価)」のまま相続税が計算されます。つまり、「亡くなりそうだから急いでアパートを建てて節税しよう」という小手先の裏ワザは完全に封じ込められたのです。
これからの時代は、「とりあえず建てれば税金が安くなる」という安易な考えを捨て、10年、20年先を見据えてじっくり時間をかけて行う「本物の不動産経営」しか生き残ることができません。
財産を次の世代へ引き継ぎながら増やす「資産形成」の仕組み
令和8年度の厳しい改正を踏まえた上で、これからの「攻めの不動産対策」として重要なのは、節税目的だけではなく次の世代に向けて資産を確実に増やしていく「不動産賃貸事業」の経営目線です。
【賃貸経営】健全な利回りで、未来の納税資金を準備する
ただ税金を減らすためではなく、駅から近い、需要が安定しているなど「毎月確実に家賃が入る物件」をなるべく早いうちから運用します。
入ってきた家賃を原資にして、子どもや孫に毎年少しずつ贈与していくことで、将来の相続税の納税資金を効率的に準備することができます。
【法人化】不動産管理会社を設立し、個人の財産膨張を防ぐ
お持ちの不動産が増えてくると、毎年の家賃収入によって現金がどんどん増え、将来の相続税が跳ね上がってしまいます。
そこで、不動産を管理する「法人(会社)」を設立し、家賃収入を会社に入れます。そこから妻や子どもに「給与」としてお給料を分散して支払うことで、親の財産が増えるのを防ぎつつ、合法的に家族の手元にお現金を移すことができます。
勤務実態がないのにもかかわらず給与を支払うことは脱税です。家族経営の法人の税務調査では必ず確認されるポイントですので、法人設立前にしっかりとした組織設計とシミュレーションを行ってください。
最後に:不動産の良し悪しを見分けられる「実務に精通した税理士」への定期相談が必須な理由
ここまで不動産の「守り」と「攻め」の対策について解説してきましたが、一つだけ強くお伝えしたいことがあります。
それは、これからの時代、ただ「税金が安くなりますよ」という口車に乗って不動産を買うと、次の世代に悩みの種を残すことになるかもしれないということです。
令和8年度の税制改正により、短期間での小手先の節税はできなくなりました。
これからの相続対策で最も重要なのは、「その不動産は、次の世代が引き継いで本当に嬉しい不動産なのか、それとも維持費や修繕費で大赤字になるお荷物(負動産)なのか」を見分ける目です。
どれだけ相続税が安くなったとしても、引き継いだアパートが空室だらけで借金だけが残ったら、子どもたちが心から喜んでくれることはないでしょう。
だからこそ、机の上の節税計算だけではなく、「不動産の実務経験が豊富で、物件の立地や収益性、将来の修繕リスクまでいっしょに見極められる税理士」に定期的にセカンドオピニオンを求めることが不可欠なのです。
当事務所では、名古屋市を中心に、地域の土地や賃貸需要の動向を肌で知る不動産実務に強い税理士が直接ご相談に乗っています。
「ハウスメーカーからアパート建築を勧められているけれど、本当にもらって嬉しい財産になる?」
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