こんにちは。税理士の蛇沼です。
実家や土地の相続では、「誰が引き継ぐか」「納税資金をどう用意するか」「引き継いだ後にどう管理するか」を早めに確認することが大切です。
「財産は実家くらいだから、相続でもめることはない」と思っていても、不動産は現金のように分けにくく、家族の希望が一致しない場合があります。
また、相続税がかかる場合には納税資金の準備が必要です。誰も住まない実家や使わない土地を引き継ぐ場合は、維持費や管理の負担も考えておきたいところです。
この記事では、実家・土地の相続で確認したい3つの課題と、遺言書や生命保険の活用、相続登記、相続土地国庫帰属制度の注意点を解説します。
- 実家や土地を相続するときの遺産分割の課題
- 相続税の納税資金を準備する際の注意点
- 空き家や使わない土地の維持費・管理の負担
- 相続登記や空き家に関する制度の注意点
- 遺言書・生命保険・相続土地国庫帰属制度を検討する際のポイント
実家・土地の相続で確認したい3つの課題
不動産の相続には、現金や株にはない、特有の「3つの落とし穴」が存在します。
【争族リスク】実家はハサミで切れない!「誰が継ぐか」の泥沼劇
例えば、財産が「3,000万円の実家」だけで、相続人が兄弟2人だったとします。
兄が「自分が実家に住む」と主張した場合、弟は「じゃあ僕の分の1,500万円は現金でもらえないと不公平だ」と言い出しますよね。
兄に1,500万円の貯金がなければ、実家を売却して現金化するか、兄が借金をして弟に払うしかありません。
これが原因で、仲の良かった兄弟が絶縁してしまうケースが後を絶ちません。
【納税リスク】財産は土地ばかり…10ヶ月以内に現金が一括で払えない!
実家や土地を引き継ぐときは、不動産の価値だけでなく、分け方・納税資金・管理の負担を合わせて確認しましょう。
① 遺産分割|誰が実家を引き継ぐか
例えば、主な財産が3,000万円の実家で、相続人が子ども2人の場合、一方が実家を引き継ぐと、もう一方との公平な分け方が課題になります。
実家を引き継ぐ人が、ほかの相続人に現金などを渡す「代償分割」や、売却して代金を分ける「換価分割」などが選択肢になります。ほかの預貯金と組み合わせて分ける方法もあります。
共有名義にする方法もありますが、将来の売却や管理で意見が分かれることがあるため、目先の分けやすさだけで決めないことが大切です。
② 納税資金|不動産が多く、手元の現金が少ない
相続税がかかる場合、申告・納税の期限は原則として、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。
納税は金銭で一括して行うことが原則です。
財産の多くが不動産であれば、財産総額は大きくても、納税に充てられる預貯金が十分とは限りません。
生前に相続税額の目安と手元資金を確認し、預貯金や生命保険、必要に応じた不動産の売却などを検討しておくと、売却を急ぐ事態を避けやすくなります。
③ 維持管理|誰も使わない実家や土地をどうするか
誰も住まない実家や使う予定のない土地でも、税金や維持管理の費用がかかる場合があります。
引き継ぐ人が遠方に住んでいると、見回りや草刈り、修繕などが負担になることもあります。
建物の老朽化や庭木の越境など、近隣への影響にも注意が必要です。
「残しておけば安心」と考えるだけでなく、誰が管理するか、費用をどう負担するか、売却や活用ができるかを家族で話し合っておきましょう。

空き家・使わない土地の維持費と制度上の注意点
使う予定のない不動産を相続するときは、毎年の費用と管理の担当者を確認しておきましょう。
費用や負担は、不動産の所在地・状態・利用状況によって異なります。
固定資産税や維持管理費を確認する
空き家や土地には、固定資産税や、地域・条件によって都市計画税がかかります。
ただし、免税点などにより課税されない場合もあります。
草刈り、庭木の剪定、建物の修繕、見回り、管理を委託する費用なども確認しましょう。
遠方に住んでいる場合は、移動の時間や交通費も負担になります。
建物の老朽化や倒木などで近隣に被害が生じると、状況によって損害賠償責任を問われる場合があります。
相続登記には期限がある
2024年4月1日から、相続登記の申請が義務化されています。
原則として、相続の開始と、その相続によって不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。
正当な理由なく申請義務に違反すると、10万円以下の過料の対象になる場合があります。
2024年4月1日より前の相続も対象です。
施行前から取得を知っていた未登記の不動産は、原則として2027年3月31日までに対応が必要です。
遺産分割の話し合いがまとまらない場合には、相続人申告登記という方法もあります。
具体的な手続きは、法務局や司法書士に確認しましょう。
参考:法務省「相続登記の申請義務化について」
空き家への勧告で、土地の税負担が増える場合がある
管理が不十分な空き家は、「管理不全空家等」や「特定空家等」として、自治体から指導などを受ける場合があります。
改善されず勧告を受けると、その敷地は固定資産税などの住宅用地特例の対象から外れ、税負担が増える場合があります。
空き家に該当しただけで、直ちに特例が外れるわけではありません。
また、税額の増加は土地の条件などによって異なるため、「必ず約4倍になる」とは言えません。
自治体から連絡があった場合は放置せず、修繕・管理・売却・解体などの対応を検討しましょう。
参考:国土交通省「空き家対策 特設サイト」
実家・土地の相続に備えて検討したい3つの対策
実家や土地を誰に引き継いでもらうか、ほかの財産とどう組み合わせて分けるかを、親が元気なうちから考えておきましょう。
対策①:遺言書で、不動産の引継ぎ先を明確にする
「実家は長男に、預貯金は次男に」など、誰にどの財産を残すかを遺言書で明確にすることは、遺産分割の話し合いを円滑にするための対策になります。
ただし、遺言書があれば必ずもめ事を防げるわけではありません。
財産の価値や家族の希望に加え、一定の相続人に認められる「遺留分」にも配慮する必要があります。
不動産を引き継ぐ人の意向や管理の負担も確認し、遺言書の作成は弁護士・司法書士・公証人などに相談しながら進めましょう。
対策②:生命保険で、代償金や納税資金を準備する
不動産を引き継ぐ人が、ほかの相続人に現金などを渡す「代償分割」を予定している場合、生命保険をその資金の準備に活用できることがあります。
例えば、実家を引き継ぐ予定の子を死亡保険金の受取人にし、受け取った保険金を代償金の支払いに充てる方法です。
ただし、保険金を受け取った人が、ほかの家族へ単にお金を渡すことと、遺産分割に基づいて代償金を支払うことは、税務上の扱いが異なる場合があります。
不動産の評価額、代償金の金額、遺産分割協議書の内容、保険料の負担者と受取人の関係を合わせて確認することが大切です。
生命保険は納税資金の準備にも役立つ場合がありますが、保険料の負担や生活資金への影響も考慮して検討しましょう。
参考:国税庁「代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算」
生命保険の非課税枠や受取人の注意点は、以下の記事で詳しく解説しています。

対策③:相続した使わない土地は、国庫帰属制度も検討する
相続または相続人への遺贈によって取得した土地は、一定の要件を満たせば「相続土地国庫帰属制度」を利用し、国に引き渡せる場合があります。
ただし、使わない土地なら何でも対象になるわけではありません。
建物がある土地、境界が明らかでない土地、所有権の範囲について争いがある土地などは、申請できません。
そのほかにも、土地の状態や管理上の負担に関する要件があります。
申請時には審査手数料が必要です。
承認された場合は、土地の区分などに応じて、10年分の標準的な管理費用を考慮して算定される負担金を納付します。
建物の解体や土地の整備が必要であれば、その費用も別途考慮します。
親が所有している土地について検討する場合も、その親自身が相続などで取得した土地かどうかを確認する必要があります。
売却などの方法と比較しながら、まずは土地を管轄する法務局へ相談しましょう。
参考:法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」
まとめ|実家・土地の相続は、分け方・納税資金・管理を合わせて考える
実家や土地の相続では、相続税の金額だけでなく、誰が引き継ぐか、納税資金をどう用意するか、引き継いだ後にどう管理するかを確認することが大切です。
遺言書や生命保険の活用、売却、相続土地国庫帰属制度など、選択肢ごとに条件や費用が異なります。
ご家族の希望と不動産の状況を整理し、早めに方向性を考えておきましょう。
生前贈与や生命保険、相続発生後の手続きなども確認したい方は、相続・贈与ガイドをご覧ください。
実家・土地の相続について、何から確認すればよいか迷ったら
当事務所では、ご家族と財産の状況をお聞きし、不動産の相続税評価や納税資金、生前対策について一緒に整理します。
登記や遺言、遺産分割などは、必要に応じて司法書士・弁護士などと連携して対応します。
すでに相続が発生している方は、相続税申告・相談のご案内もご覧ください。
名古屋市緑区を中心に、天白区・南区・大府市・東海市・豊明市などの周辺地域に対応しています。
初回60分の相談は無料です。ご自宅やお近くのカフェへの出張相談も承ります。
相続した不動産に関するよくあるご質問
Q. 相続した不動産は、すぐに売った方がいいですか?
いいえ。相続したからといって、すぐに売却する必要はありません。
売る・貸す・自分や家族が住むなどの選択肢があり、不動産の立地や状態、維持費、収益性、ご家族の意向などによって適した方法は異なります。
Q. 相続した実家を誰も使わない場合、どうすればいいですか?
誰も住む予定がない場合には、売却する、賃貸する、一定期間保有するなどの選択肢があります。
ただし、利用しないまま保有していても、固定資産税や管理・修繕などの負担は続きます。建物の老朽化も進むため、将来の利用予定がなければ早めに方向性を検討することをおすすめします。
Q. 相続した不動産を売ると税金がかかりますか?
売却によって利益が生じた場合には、所得税・住民税がかかることがあります。
相続した不動産では、亡くなった方の取得費や所有期間を引き継いで計算するのが原則です。また、一定の要件を満たせば、相続税の取得費加算や空き家を売却した場合の特例などを利用できることがあります。
売却する前に、利用できる特例がないか確認しておくことが大切です。
Q. 相続した不動産を貸すのと売るのでは、どちらがいいですか?
一概にどちらが有利とはいえません。
賃貸すれば家賃収入を得られる可能性がありますが、空室、修繕、管理などの負担も生じます。一方、売却すれば現金化でき、財産を分けやすくなるメリットがあります。
現在の価格だけでなく、将来の収支やご家族への承継まで含めて比較することが重要です。
Q. 売るか貸すか決めていない段階でも税理士に相談できますか?
はい。まだ方針が決まっていない段階でもご相談いただけます。
不動産は、売却・賃貸・保有のどれを選ぶかによって、税金だけでなく今後の収支や相続にも影響します。
当事務所では、税務だけでなく不動産・資産運用の視点も含めて、それぞれの選択肢を整理しながら検討します。
当事務所の詳しいサポート内容や料金プランについては、以下より公式ホームページをご覧ください。
👉 >> 蛇沼浩之税理士事務所・公式ホームページはこちら


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