生命保険を使った相続対策|非課税枠・納税資金・受取人の注意点を税理士が解説

こんにちは。税理士の蛇沼です。

「相続対策に生命保険が役立つと聞くけれど、どんなメリットがあるの?」と疑問に思っていませんか?

生命保険は、死亡保険金の非課税枠を活用するだけでなく、残された家族の生活費や相続税の納税資金を準備する方法としても使われます。

また、受取人を指定することで、原則として遺産分割協議とは別に、その人へ現金を残せるという特徴があります。

ただし、加入すれば必ず相続税が安くなるわけではありません。保険料を実際に負担した人や受取人によって、かかる税金や非課税枠の適用が変わります。

この記事では、生命保険を相続対策に活用する3つのメリットと、加入前に確認したい税務・手続き上の注意点を解説します。

税制に関する記載は、2026年9月30日時点の情報に基づいています。

この記事でわかること
  • 生命保険が相続対策に活用される理由
  • 死亡保険金の「500万円×法定相続人」の非課税枠
  • 預金にはない、生命保険ならではのメリット
  • 相続税の納税資金や遺産分割に生命保険を活用する方法
  • 保険料の負担者・被保険者・受取人によって税金が変わる仕組み
目次

生命保険を相続対策に活用する3つのメリット

生命保険は、死亡保険金の非課税枠の活用、特定の家族への現金の準備、相続発生後の資金確保という3つの面から、相続対策に役立つ場合があります。

【税金に備える】死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠

亡くなった方が保険料を負担していた死亡保険金を相続人が受け取る場合には、次の非課税枠があります。

非課税限度額=500万円×法定相続人の数

例えば、法定相続人が妻と子ども2人の場合、非課税限度額は1,500万円です。

この枠は、相続人が受け取った対象の死亡保険金の合計額に適用されます。
受取人ごと、保険契約ごとに1,500万円の枠があるわけではありません。

預貯金にはこの非課税枠がないため、生命保険を活用することで、相続税の課税対象となる財産を減らせる場合があります。ただし、もともと相続税がかからない場合には、この枠による相続税の軽減効果はありません。

また、相続人以外の人が受け取る死亡保険金には、この非課税枠は適用されません。相続放棄した人も、非課税枠を利用できる相続人には含まれません。

なお、非課税限度額を計算する際の法定相続人の数は、相続放棄がなかったものとして数えます。

参考:国税庁「相続税の課税対象になる死亡保険金」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4114.htm

【渡す相手を決める】特定の家族に現金を残す方法になる

預貯金や不動産を誰が引き継ぐかは、遺言の有無や遺産分割の内容によって決まります。
話し合いに時間がかかると、必要なお金を使えるようになるまで待たなければならないこともあります。

一方、受取人が指定されている死亡保険金は、原則として受取人固有の財産です。
遺産分割協議の成立を待たずに、受取人が保険会社へ請求できます。

例えば、配偶者の当面の生活費を確保したい場合や、不動産を引き継ぐ子どもに納税資金を残したい場合に、活用を検討できます。

ただし、生命保険だけで家族間の争いを必ず防げるわけではありません。保険金を含めて誰にどれだけ財産が渡るかを整理し、必要に応じて遺言や遺産分割の方針と併せて考えることが大切です。

【当面の資金に備える】預金の相続手続きとは別に請求できる

相続発生後は、亡くなった方の預金を払い戻すために、金融機関で相続手続きが必要になります。
手続きが終わるまで、家族の生活費や葬儀費用の準備に困ることもあります。

死亡保険金は、亡くなった方の預金とは別に、指定された受取人が保険会社へ請求できます。
受取人の口座で受け取れるため、当面の資金を準備する方法のひとつになります。

ただし、死亡直後に自動で振り込まれるわけではありません。
請求手続きが必要で、必要書類や支払いまでの日数は、保険会社・契約内容・確認事項によって異なります。

加入している保険会社の連絡先や保険証券の保管場所を、受取人となる家族と共有しておきましょう。

預金にも、遺産分割前に払い戻せる制度があります

預金についても、一定の範囲で、相続人が単独で払い戻しを受けられる制度があります。

家庭裁判所の判断を経ずに利用する場合、各口座について次の金額を計算します。

相続開始時の預金額×1/3×払い戻しを受ける相続人の法定相続分

ただし、同一の金融機関から払い戻せる金額は、相続人1人につき合計150万円が上限です。
複数の支店や口座があっても、口座ごとに150万円を払い戻せるわけではありません。

必要書類や手続きは金融機関に確認してください。
生命保険と預金の払戻し制度、それぞれの特徴を踏まえて、家族が使える資金を準備しておくことが大切です。

参考:全国銀行協会「遺産分割前の相続預金の払戻し制度のご案内」
https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/article/F/7705_heritage_leaf.pdf

不動産を引き継ぐ家族のために、納税資金を準備する

相続税の申告・納税期限は、原則として、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。
納税は金銭による一括納付が原則となります。

不動産の割合が大きいご家庭では、財産があっても、納税に使える預貯金が不足することがあります。

例えば、子どもが自宅や賃貸不動産を引き継ぐ予定でも、その子どもに十分な現金が渡らなければ、納税資金を別途用意する必要があります。

生命保険は、不動産を引き継ぐ人を受取人にして、納税資金を準備する方法のひとつです。

大切なのは、家族全体の現金の総額だけでなく、「誰に、いくらの税金がかかり、その人がいくら現金を受け取れるか」を確認することです。

保険金額を決める前に、財産全体と分け方を整理し、相続税の概算額を確認しておきましょう。

相続税がいくらかかるか不安な方へ
ご家族と財産のおおよその金額から、相続税がかかる可能性を約3分で確認できます。

【重要】死亡保険金の税金は、実際の保険料負担者で変わります

死亡保険金にかかる税金は、被保険者・実際に保険料を負担した人・受取人の組み合わせによって変わります。

契約者の名義だけで判断せず、保険料を誰の資金で支払っていたかを確認することが大切です。

以下は、保険料の全額を1人が負担していた場合の例です。

亡くなった人(被保険者)実際に保険料を負担した人死亡保険金の受取人対象となる税金
父父子相続税
父子子所得税
母父子贈与税

相続税の対象になる場合でも、実際に納税額が生じるかは、非課税枠や他の相続財産などによって異なります。

また、所得税・贈与税の対象になる契約が、一律に「間違った契約」というわけではありません。
保障の目的や家族の事情によって、適した契約形態は変わります。

以前から加入している保険についても、保険証券に加えて、保険料の支払履歴や資金の出どころを確認しておきましょう。複数の人が保険料を負担していた場合には、負担割合に応じた確認が必要です。

参考:国税庁「死亡保険金を受け取ったとき」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1750.htm

📌 そもそも相続対策って何からやればいいの?という方は、こちらの記事もお読みください。

まとめ:生命保険は、家族に必要な現金を残すために考える

生命保険は、死亡保険金の非課税枠の活用、特定の家族への現金の準備、相続発生後の生活費や納税資金の確保に役立つ場合があります。

加入前に確認したいのは、次の3点です。

  • 相続税がどのくらいかかりそうか
  • 誰に、どのくらいの現金を残す必要があるか
  • 保険料を負担しても、ご自身の生活費や介護費用に支障がないか

まずは現在の保険と財産全体を整理し、必要な保障額と受取人を検討しましょう。

当事務所では、名古屋市緑区を中心に、相続・贈与の初回60分無料相談を行っています。
ご自宅への出張相談も可能です。

保険証券や財産の概要をもとに、納税資金やご家族への残し方を一緒に整理します。

生命保険を使った相続対策に関するよくあるご質問

Q. 生命保険に入れば、必ず相続税が安くなりますか?

必ず安くなるわけではありません。
亡くなった方が保険料を負担していた生命保険の死亡保険金を相続人が受け取る場合には、

500万円 × 法定相続人の数

までの非課税枠があります。
ただし、もともと相続税がかからない場合には、この非課税枠による相続税の軽減効果はありません。

生命保険には、相続税を抑えることだけでなく、納税資金を準備したり、特定の家族に現金を残したりできるメリットもあります。

Q. 預金を生命保険に変えるだけでも相続対策になりますか?

相続対策になる場合があります。
預貯金には死亡保険金のような「500万円×法定相続人の数」の非課税枠はありません。

また、生命保険金は原則として受取人固有の財産となるため、遺産分割とは別に受取人が保険会社へ請求できるという特徴があります。

そのため、相続税対策だけでなく、納税資金や遺産分割への備えとして活用できる場合があります。

Q. 生命保険金は、遺産分割が終わるまで受け取れませんか?

原則として、遺産分割が終わるのを待つ必要はありません。

受取人が指定されている死亡保険金は、原則として受取人固有の財産となるため、受取人が保険会社へ請求して受け取ることができます。

相続発生後の当面の生活費や葬儀費用、相続税の納税資金などを確保しやすいことも、生命保険を相続対策に活用するメリットのひとつです。

Q. 生命保険なら、どんな契約でも相続税の非課税枠を使えますか?

いいえ。契約形態によって、かかる税金が変わります。

誰が保険料を負担したか、誰が被保険者か、誰が保険金を受け取るかによって、死亡保険金が相続税・所得税・贈与税のいずれの対象になるかが変わります。

相続税の非課税枠を利用できるのは、一定の要件を満たす死亡保険金です。

加入前だけでなく、以前から契約している生命保険についても、契約者・被保険者・受取人と、実際の保険料負担者を確認しておくことが大切です。

Q. 相続対策のために、新しく生命保険に入った方がいいですか?

必ずしも新しく加入する必要はありません。
まずは現在加入している生命保険の内容と、預貯金・不動産などを含めた財産全体を確認することが大切です。

相続税がどのくらいかかりそうか、納税資金は十分か、財産を誰に残したいかなどによって、必要な対策は変わります。

当事務所では、生命保険だけを前提にするのではなく、生前贈与や不動産、遺言なども含めて相続全体から対策を検討しています。

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    この記事を書いた人

    税理士の蛇沼です。
    名古屋市緑区を中心に天白区、南区、大府市、東海市、豊明市などで相続・贈与相談をサポート。司法書士・弁護士・宅建士等との連携で、あらゆるお悩みの「総合窓口」として対応します。
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