2026年10月からインボイス制度が変わる|8割控除は7割へ・2割特例終了後を税理士が解説

こんにちは。税理士の蛇沼です。

インボイス制度が始まってから3年となる2026年(令和8年)10月以降、経過措置の内容が変わります。

「免税事業者への支払いは、仕入税額控除が8割から7割になるの?」
「2割特例が終わったら、消費税の負担は一気に増える?」

この2つは混同されやすいのですが、対象となる事業者が異なる別の制度です。

8割控除から7割控除への変更

免税事業者などから仕入れを行う「買い手側」の経過措置

2割特例の終了

インボイス登録を機に課税事業者となった「売り手側」の負担軽減措置

この記事では、2026年10月前後に何が変わるのか、個人事業者と法人は今後どのように対応すればよいのかを解説します。

※本記事は2026年9月21日現在の法令・国税庁公表資料に基づいています。

この記事でわかること
  • 8割控除から7割控除へ変わる仕組み
  • 免税事業者からの仕入れも経費にできる理由
  • 2割特例をいつまで使えるのか
  • 個人事業者向けに新設された3割特例
  • 2割特例終了後に検討すべき一般課税と簡易課税
  • 2026年10月以降の実務対応
目次

2026年10月から変わる2つのポイント

免税事業者等からの仕入れは「8割控除」から「7割控除」へ

インボイス発行事業者ではない免税事業者などから課税仕入れを行った場合、買い手は原則として仕入税額控除を受けられません。

ただし、制度開始後の急激な負担増を避けるため、一定割合を控除できる経過措置が設けられています。令和8年度税制改正により、この経過措置は次のように見直されました。

期間控除できる割合
2023年10月~2026年9月80%
2026年10月~2028年9月70%
2028年10月~2030年9月50%
2030年10月~2031年9月30%
2031年10月以降0%

従来は2026年10月から50%へ下がる予定でしたが、令和8年度税制改正により、まず70%へ引き下げ、その後も段階的に縮小する形へ変更されています。

この表は、インボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れについて、所定の保存要件などを満たして経過措置を適用する場合の割合です。

また、2026年10月1日以後に開始する課税期間からは、同一の相手先からの対象となる課税仕入れの税込合計額が、その年または事業年度で1億円を超える場合、超える部分には経過措置を適用できません。

2割特例は終了。ただし個人事業者には「3割特例」

2割特例は、インボイス登録を機に免税事業者から課税事業者になった方について、消費税の納付額を原則として売上税額の2割にできる制度です。

適用対象は、2023年10月1日から2026年9月30日までの日を含む課税期間です。そのため、「2026年10月1日になったら、すべての事業者がその日から使えなくなる」という意味ではありません。

例えば個人事業者は、要件を満たせば2026年分の申告まで2割特例を適用できます。法人は決算期によって最後に適用できる事業年度が異なります。

さらに令和8年度税制改正では、一定の個人事業者を対象に、2027年分と2028年分の納付税額を売上税額の3割とする「3割特例」が創設されました。

区分2割特例終了後の取り扱い
要件を満たす個人事業者2027年分・2028年分は3割特例を選択可能
法人3割特例の対象外
一般課税または簡易課税を検討

「7割控除」と「3割特例」は同じ制度ではない

数字が似ているため注意が必要です。

7割控除

課税事業者である買い手が、免税事業者などインボイスを発行できない相手へ支払った場合に、その仕入れに含まれる消費税相当額の70%を控除できる経過措置です。

3割特例

インボイス登録を機に課税事業者となった一定の個人事業者が、売上税額の30%を納付税額とする制度です。法人は利用できません。

つまり、7割控除は「買い手側の仕入税額控除」、3割特例は「一定の個人事業者の納付税額計算」に関する制度です。

免税事業者からの仕入れも「経費」にできます

ここは、インボイス制度について特に誤解されやすいところです。

インボイス未登録の免税事業者から仕入れたからといって、その支払額が経費にならないわけではありません。

インボイスの有無が影響するのは、主に消費税の仕入税額控除です。
事業に必要な仕入れ、外注費、家賃などであれば、支払先が免税事業者であっても、取引本体の金額が法人税や所得税の計算上の経費から除外されることはありません。

控除できない消費税相当額も、原則として費用や資産の取得価額に含めて処理します。

「経費にできるか」と「消費税をどこまで差し引けるか」は、別の問題です。

確認する税金免税事業者への支払いの取り扱い
法人税・所得税事業に必要な取引であれば、取引本体の金額は原則として経費
控除できない消費税相当額も原則として費用または取得価額に算入
消費税インボイスがないため全額控除はできないが、経過措置により一定割合を控除できる

税込110万円を支払った場合

免税事業者に外注費として税込110万円を支払い、消費税相当額を10万円とした場合で考えます。

  • 法人税・所得税:取引本体の100万円は外注費。控除できない消費税相当額も原則として費用に含める。
  • 消費税:2026年10月以降の7割控除では、10万円のうち7万円を仕入税額控除。
  • 税抜経理の費用:外注費100万円+控除できない消費税相当額3万円=103万円が基本。

税抜経理では、控除できない消費税相当額を外注費などの費用に含めて処理するのが基本です。
税込経理では、支払総額を税込金額で経費処理します。固定資産の取得や課税売上割合などによって取扱いが異なる場合は、個別の確認が必要です。

したがって、取引先にインボイス登録がないことだけを理由に、「経費にならない」「取引してはいけない」と判断するのは正しくありません。

まずは消費税負担がどの程度増えるのかを計算し、取引内容や価格、相手との関係も含めて判断しましょう。

8割控除から7割控除になると、負担はいくら増える?

以下は、一般課税で、対象の仕入れについて経過措置による控除を全額適用できる場合の比較です。

簡易課税や2割・3割特例では、実際の仕入税額を積み上げて納付税額を計算しないため、この差額がそのまま納税額の増加になるわけではありません。

免税事業者への課税仕入れが税込110万円(消費税率10%)だった場合で比べます。

  • 消費税相当額:10万円
  • 8割控除:8万円を仕入税額控除
  • 7割控除:7万円を仕入税額控除
  • 差額:1万円

ほかの条件が同じであれば、控除額が1万円減るため、買い手側の消費税負担は1万円増える計算です。

免税事業者との取引額が大きい事業者ほど影響も大きくなります。
外注先、フリーランス、個人の貸主など、インボイス未登録の取引先への年間支払額を確認しておきましょう。

経過措置を適用するには、区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等の保存や、経過措置の適用を受ける旨を記載した帳簿の保存など、所定の要件があります。

2割特例終了後は、どの計算方法を選ぶ?

2割特例終了後は、個人事業者と法人で選択肢が異なります。

要件を満たす個人事業者は、2027年分・2028年分について3割特例を利用できます。
ただし、3割特例が必ず最も有利とは限らないため、一般課税や簡易課税による納付税額とも比較しましょう。

法人は3割特例の対象外です。簡易課税を選択できる要件や届出状況を確認し、一般課税との比較が必要になります。

今後の設備投資や事業内容の変化も含めて、計算方法を検討することが大切です。

一般課税

売上で預かった消費税額から、仕入れや経費で支払った消費税額を差し引いて納付額を計算します。

実際の仕入れや経費が多い事業者、設備投資を予定している事業者では有利になることがあります。
一方、インボイスの確認・保存や課税区分の管理が必要です。

簡易課税

実際の仕入税額を集計せず、売上税額に業種ごとの「みなし仕入率」を掛けて控除額を計算します。

基準期間の課税売上高が5,000万円以下であることなどが要件です。
みなし仕入率は、卸売業90%、小売業80%、製造業等70%、その他の事業60%、サービス業等50%、不動産業40%です。

一般課税と比べると経理処理は簡単になりますが、複数事業を営む場合は売上区分が必要です。
また、簡易課税は選択すると原則2年間継続して適用するため、今後の設備投資も含めて判断する必要があります。

2割・3割特例から簡易課税へ移る際の特例も確認

簡易課税を選ぶ場合、通常は適用を受ける課税期間が始まる前日までに届出書を提出します。

令和8年度税制改正では、2割特例または3割特例を適用した翌課税期間から簡易課税へ移行する場合、一定の要件のもとで、その課税期間の申告期限までに届出書を提出できる措置が設けられました。

届出時期を誤ると希望する年度から簡易課税を使えないことがあるため、決算期と適用関係の確認が重要です。

2026年10月以降に確認したいこと

買い手側

  • インボイス未登録の取引先を把握する
  • 取引先ごとの年間支払額と影響額を試算する
  • 会計ソフトの控除割合が適切に更新されるか確認する
  • 経過措置に必要な請求書・帳簿の保存方法を確認する
  • 取引条件の見直しは、一方的な値下げにならないよう慎重に行う

2割特例を利用している事業者

  • 自分が最後に2割特例を使える課税期間を確認する
  • 個人事業者は3割特例の要件を確認する
  • 法人は一般課税と簡易課税の税額を比較する
  • 高額な設備投資や仕入れの予定を織り込む
  • 簡易課税の届出期限を確認する

まとめ

2026年10月前後のインボイス制度の主な変更は、次の2点です。

  • 免税事業者等からの仕入れに係る控除割合は、8割から7割へ段階的に縮小。
  • 2割特例は適用期間を終えるが、一定の個人事業者には2027年分・2028年分の3割特例が新設。

特に注意したいのは、7割控除と3割特例は対象者も計算方法も異なることです。また、2割特例の最終適用時期は、個人か法人か、法人であれば決算期がいつかによって変わります。

一般課税・簡易課税のどちらが有利かは、業種、経費率、設備投資の予定などによって異なります。
税率だけで判断せず、実際の数字で比較しておきましょう。

参考:国税庁「インボイス制度に関する令和8年度税制改正特集」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice-review/

インボイス制度に関するよくあるご質問

Q.2026年10月1日から、2割特例は使えなくなりますか?

一律に10月1日から使えなくなるわけではありません。
2割特例は、2023年10月1日から2026年9月30日までの日を含む課税期間が対象です。

個人事業者は要件を満たせば2026年分まで利用でき、法人は決算期によって最後に適用できる事業年度が異なります。

Q. 個人事業者なら全員、3割特例を使えますか?

いいえ。
インボイス登録を受けており、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であることなどの要件があります。

インボイス登録と関係なく課税事業者となる方や、課税期間を短縮している方などは対象外となる場合があります。

Q.法人にも3割特例はありますか?

ありません。
3割特例は、一定の個人事業者の2027年分・2028年分が対象です。

法人は2割特例終了後、一般課税または簡易課税による申告を検討します。

Q. 免税事業者から仕入れると、2026年10月以降は7割しか経費にできないのですか?

いいえ。
事業に必要な取引であれば、取引本体の金額は法人税や所得税の計算上、原則として経費になります。

控除できない消費税相当額も、原則として費用または資産の取得価額に含めます。
「7割」は経費にできる割合ではなく、消費税の仕入税額控除の割合です。

Q. 簡易課税を選べば、インボイスの保存は不要ですか?

消費税の納付税額計算上は、実際の仕入税額を積み上げないため、仕入税額控除のためのインボイス保存は不要です。
ただし、法人税・所得税の経費を証明するため、請求書や領収書などは引き続き保存する必要があります。

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この記事を書いた人

税理士の蛇沼です。
名古屋市緑区を中心に天白区、南区、大府市、東海市、豊明市などで相続・贈与相談をサポート。司法書士・弁護士・宅建士等との連携で、あらゆるお悩みの「総合窓口」として対応します。
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